34歳の正月に会社員卒業を決意し、35歳で独立、本当に早いもので、あれから5周年を迎えることとなった。
公私ともにおつきあいいただいた方々に心から感謝を申し上げたい。こんな薄っぺらな言葉では足りないのであるが、とりあえず……。
バブルはじけて不景気の時代が続き、失業率の高さは今も深刻な問題。この5年間には世界情勢も大きく変容を遂げた。中国の経済成長……日本市場はもう見込みないから、21世紀は中国の時代だ! と多くの日本企業がこぞって進出をしたのもこの数年の話。そしてもう一方には忘れることのできないあのニューヨークの世界貿易センターテロ事件……。そのあとも忌まわしい事件は続き、哀しいかな戦争へと発展し、事態は何も解決されないまま、世界中が巻き込まれている。また、狂牛病の発生から「食の安全」という常識が一変、その後も幾多の食中毒事件、それにまつわる偽装事件が後を絶たず、生活者の毎日の食事に対する見方、企業に対する信頼感も大きく変わった……。今年前半のSARS騒動では、中国をはじめアジア各国が世界から隔離され、各業界に大きな影響を与えた……。と順不同であるがざっと思い出しただけでも、世界を震撼させるビッグニュースの多い5年間であり、これはまさに世紀越えの証しかもしれないともいえる。
そんな状況のなか、私はいろんな方々に支えられ、生きながらえた。台湾をはじめ各国へのビジネストリップ。パスポートには無数のスタンプ。この一つ一つにその旅ごとの思いも刻印されている。異国に行って仕事をすることの緊張感、充実感を体験させていただいた。言葉の通じない相手に自分の考えをいかに伝えるかは大きな課題であり、今ふりかえればそれは国や言葉を越え共通であることを学んだ。2001年9月11日のテロにも1日違いで犠牲者になることなく、その後も10回以上NYの地を訪れている。(しかし、グランドゼロには今だに行く気がしない)そのとき、人生における「1日」の重要性をあれほど感じたことは後にも先にもない。あの事件で心身の傷を負いながら、それをバネにパワーアップするアメリカの変化を自分なりに受けとめ、人間の「運命」についても考えさせられた。また、一方では中国への日本企業進出のお手伝いをすることで、マーケティングとは常にグローカルであるべきとのことを身をもって感じ取り、企業で働く一人一人が現地の文化や習慣を真に理解し、一体とならなければ海外マーケットは簡単には創造できないことも学んだ。
すぐれた商品だから……というのは創り手の奢りであり、生活者は最初はそれを知らない。そこからの出発なのである。
さて、この5年間はマーケティングの仕事をしながら、違う自分の表現にも試みた。
ひとつはピアニストとしての活動である。もし、独立せず会社員のままでいたら、この発想はなく、鍵盤を叩く日は老後まで来なかったかもしれない。イタリアンレストランの真夜中イベントでの演奏がきっかけとなり、毎週金曜日をピアノの日と決め、店を訪れカンツォーネを奏でた。そこで出会ったカップル客の結婚式の演奏まで引き受け、松本まで行ったこともあった。そのあとは、六本木のおでんBARでも演奏を行い、普段出会うことのない商社マンたちとも出会った。自分の弾いた「ひまわり」を聴き、天津駐在時代を懐かしく思い出し涙を浮かべておられたビジネスマン……のことなどが脳裏をよぎる。そして今年は上海錦江集団が経営する、赤坂のレストランで演奏を行う機会を与えられた。ノスタルジックピアニストも国際的な活動? を継続中である。
そして、5年前までは信じられなかったことであるが、いくつかの講演活動もさせていただくようになった。フードサービス、流通、ホテル、教育、セキュリティ業界……。東京近隣、京都、高松から台北、ソウルまで講演のため足を運んだ。一見、全く異なる業界に対して、本部のマーケティング担当者に対して、時には現場の最前線で活躍する店長や販売の担当者に対して、二代目経営者に対して、地域で活躍する母親たちに対し、多業種交わるマーケティング勉強会でプロのマーケッターに対し、お話をさせていただく機会を得た。私が話をさせていただいたのは、主には「いかにお客様と素敵な関係を創るか」すなわち、このコミュニケーションの構築と継続こそが、地域一番店になるための最必要十分条件である!という内容であった。また、いかにこのボーダレスな社会において、グローカルな発想とコミュニケーションの実践が重要か。さらに「顧客満足から個客感動」の話。サービス業界をとりまく現状を打破し、勝ち組になるための「新たなパワー」が湧き出る、そのヒントとなるように、世界中を歩き回っての事例を多く示し、自分なりの考えを五感で伝えてきた。有償・ボランティア・・いろんなケースがあったが、講演こそ、聞き手と一体になれる貴重なコミュニケーションの場である。この経験で、歌手がステージで歌う喜びと同じ?ような気分も体験させていただいた。すべては瞬間芸である。いかに相手の心に飛び込むか。第一印象が必要か。これらの訓練をさせていただいた。講演の前日は眠れないことも多かった。(今もそうだ)またコミュニケーションは五感を駆使することがもっとも確実であること……。素人ながらデジタルカメラとパソコン、幾多の海外出張のおかげで、自分なりのソースを自分なりにアレンジし、体を使って表現することもこの5年間で勉強させていただいたと思う。長年プレゼンテーションをし続けてきた経験と、幼い頃のステージ経験が今まさに役に立っていると思う。右脳・左脳を使い分け、いろんなステージに登場、本当に落ち着きのない5年間であったといえるが、そんな私を支えてくださった人たちがいてくださる。コンサルタントとして、アドバイザーとして、プランナーとして、講演者として……お仕事のおつきあいをいただいている企業に心から感謝である。そして、それを応援してくださる有難い仲間たち……。年齢・性別・国籍を超えて連絡をいただき、会う機会を求めていただける人々……。自分のような小さな、小さな存在を忘れずにいていただけることに心から感謝である。
さて、5年経ち、40代のスタートともなった。
これからの抱負は? 毎日が日々変化・進化であるため線を引くことはできないが、とにかく、「何が大切か」をまず考え、「動機は善」である活動を増やしていくこと。そして、まだまだやらねばならない課題がある。「したいこと」をジャストドリームに終わらせることなく、実現させていく行動力を磨きたい。
いつが折り返し地点かわからない。だから毎日が折り返し。そんな気もちで、周囲への感謝を忘れず、1日1日を大切に重ねていきたい。
ミルフィーユな人生! なんだかわくわく! さあ、明日も新しく前進!
最後に、改めて周囲の皆様に心より厚く感謝を申し上げます。おつきあいいただき、ありがとうございました!
これからもどうぞ、よろしくお願い申し上げます!