何度見ても泣ける映画がある。それはマストロヤンニとソフィアローレンの「ひまわり」である。この映画の中で忘れられないのが「駅」である。出発、見送り、出迎え、再会、別れ……。この映画では戦争によって生き別れた二人のすべての節目に必ず、駅が登場する。とくに、戦争が終結し、夫が帰ってくるのではないかと義母と一緒に夫を探すシーン、生きて再会できたのに、互いに違う人生を歩み始めていたがために別れなければならなかった最後のシーンは、今でも頭の中でフェイドアウトしている。
このほかにも、「終着駅」や数々の名画において、駅は主人公的な役割を果たしてきた。映画だけでなく、竹内まりあの「駅」や、イルカの今は懐かしい「なごり雪」も駅が舞台である。私がカラオケで歌う十八番である。あのテレサテンの「空港」もそうである。
名曲といわれている音楽に、駅、空港が出てくるものは意外に多い。
映画や歌の世界だけではなく、私のこれまでの人生をふりかえっても「駅」についての思い出は少なくない。
昔、「シンデレラエキスプレス」という言葉が流行ったが、会社員時代、よく東京〜京都を往復していた時のこと。京都駅21時発の最終の新幹線に乗って東京へ移動したことがあった。そのとき、よくいろんな人が見送ってくれた。
その時間まで一緒に飲んでいた上司、仲間、当時の??などなど……。逆に東京発の最終電車ではいろんな人々を見送った。
また近いうちに会えるはずなのに、ホームで見送られると大変切ない気持ちになったものだ。会社員をやめた日もそうだ、その日は「急行出雲」だったか、今はおそらく存在しない、懐かしい夜行列車で京都駅を発ったが、そのとき京都駅で仲間たちが「バンザーイ」と見送ってくれたことを今も懐かしく思い出し、胸がいっぱいになる。
故郷である岐阜から京都へ出たとき、両親は大反対だったので、当時は見送りも出迎えももちろんなかったが、最近では岐阜へ帰る機会があると、両親や妹は必ず岐阜駅に迎えに出てくれる。時間がない時は名古屋駅で集合である。駅がミーティングポイントなのである。
家族が東京に出てくるときも、東京駅で迎え、見送る。迎えるときは、気恥ずかしいものであるが、見送るときはいつも胸がいっぱいになってしまう。これは不思議である。
私は「駅」「空港」「港」へ行って、ずっとたたずんでいるのが好きである。とくに、いろんな種類の列車が行きかうターミナルが好きである。列車や飛行機を見て、「あれはどこへ行くのだろう。」と想像しているだけで楽しいものだ。
東京駅やNYのセントラル駅のように(そういえば、NYのセントラル駅もさまざまな映画の舞台になっていた)往く人々を呑み込んでしまう巨大駅も見ていてわくわくする。今度はどんな列車が行くのかと時刻表を見ているだけでも、自分も旅をした気分になれるのである。そして、「KIOSK」が大好き。コンビニのルーツは駅の売店ではないか! とつねづね思っている。そういえば、KIOSKは万国共通語である。ちっちゃなキャンディー、カード、タバコ、雑誌、飲料……。それらを見ているだけで、旅の楽しさが倍増する。
先週(12月10日)、フランスへ行った。数年前にマーケティングツアーで訪れたシャンパンの町、ランスとエペルネという町へ今度は電車でひとりで行ってみようと思った。
パリには大きな駅が4つある。サンラザール駅、北駅、リヨン駅、そして今回利用した東駅。パリからロンドンへ行ったときは北駅からユーロスターに乗り、いかにも列車で海外に出るという緊張感もあったが、今回のシャンパーニュ行きは、見事にローカルな旅である。シャンパンを作る葡萄畑が車窓を流れていくのを眺めながら、前の座席に座っている老婦人たちと、つたないコミュニケーションを楽しむ。「ボンジュール」の発音が悪く、何回も何回も口の形を直されているうち、列車は1時間半の移動を終え、シャンパーニュの第一都市、「REIM(ランス)」という町に到着する。ジャンヌダルクの像を何とかみつけ、あのレオノールフジタの教会を探検し、再び列車に乗り、パリに引き返す途中、シャンパン工場の町、「EPERNAY(エペルネ)」に途中下車する。電車は1時間に1本もない。東京暮らしに慣れている身において、フランスはとても便利とはいえない街である。しかし、この小さな駅に降り立ち、どれだけ社会が変化しても、何も変わっていない町に足を踏み入れると、旅とは単なる空間の移動ではないことを実感するのである。
再び、NYのセントラル駅に話を戻す。テロの1ヶ月後、ここを訪れたことは前号に書いた。
駅内には、WTCで亡くなった方たちの顔写真が掲示され、「MISSING」と書かれていた。きっと、遺族やお友達は、この方たちは帰ってくる! きっと元気に戻ってくる!という意味を込めて、駅でメッセージを送っているのだと思った。
駅は、出会いと別れ、そしてまた出会い……。
人生自身においても、「駅」がある。
素敵な駅に降り立ってみたい。
そして、自分が「駅」のような人になれたら面白いと思う。
さて、次はどこの駅をさまようか・・・・。