先日、出張先の帰りの飛行機の中で、素敵な紳士に出会った。年齢は70才は超えていらっしゃようだが、姿勢もよく言葉づかいも丁寧で、機内のスチュワーデスとの会話には滑らかな英語も飛び出し・・なかなかの雰囲気をかもし出している方であった。話をしてみると、何でもその紳士は、貿易業を営んでおられるそうで、戦後まもなく開始されたということであるから、なんと50年はこの仕事をされているわけだ。「一生、仕事をされるんですか」という質問に「食っていかねばなりませんからね。それから、仕事が好きなんです」という力強い言葉に、大変興味を覚えた。
60才、定年。リタイア。することがない。なんていうおじさんも多いと聞くが、生涯現役、アタッシュケースを抱えて、さっそうと海外出張に出るこの紳士は21世紀的な人生をおくっておられるように思った。格好いい。
最近、仕事に恵まれて本当にありがたいと思うことがある。失業率がまだまだ高いこの社会のなかで毎日することがあり、そこでいろんなことを学ばせていただけることには感謝感謝である。周りには「いい仕事」をしている人たちがたくさんいる。

その1 カンツォーネを歌うレストランの支配人 手話もできる総支配人
毎週金曜日にピアノを弾きにいっているレストランには天職人が多い。まずは、カンツォーネを歌う支配人桜井氏。当初はアカペラでも歌っていたが、最近では自分とのデュオが多い。料理の合間のひとときを楽しんでもらおう、また誕生日や結婚記念日などとっておきの記念日をよき思い出にとお客様に歌のおもてなし。彼自身はイタリアに行ったことがないそうであるが、お父上がカンツォーネファンで幼少の頃より、いつもカンツォーネを聴いて育ったそうだ。道理で、顔つきもナポリの紳士のように立派で、堂々とした歌いっぷりはどう見ても本場仕込みである。私は彼の歌の伴奏をするのが大好きであるし、そのひとときは至福の瞬間でもある。お客様も皆、箸を(いや、フォーク)を止めて耳を傾け、うっとりする。
そして、この感動を与えるレストランにはさらにサービスのプロフェッショナルである親分がいる。ザッキーさんと呼ばれている座喜味氏。「座って、喜んで、味わう」という名前。まさに外食産業におけるサービスマンの神髄を象徴しているかのようだ。生まれながらにこの職業が決まっていたのかもとご本人説。彼は常にお客ひとりひとりを、店のスタッフをつぶさに観察し、どのお客にも満足を与えているかどうかをチェックしながら、時には自身がお客の話し相手に、ときには若手スタッフをテーブルに送り込む。レストラン全体を満足の輪で包もうとするコンダクターのような存在である。料理人、サービス係、お客様の関係を一体にする。食事はハーモニーである。おいしい料理を美味しく食べていただけるための「プロヴィス」の実践人なのである。どんな客を相手にでも、ぽんぽん話題が出てくるあたりは素晴らしいといつも感心している。それだけでなく、手話でもサービスできる達人である。

その2 自己表現をめいっぱいするアーチストたち。芸が仕事とは素晴らしい・・
ふとした出会いで知り合った画家美山さんがいる。彼は、絵も描き、バイオリンも作り、演奏もする。ご本人によると写真とかその他、もっといろいろできるそうで、希有なマルチタレントである。そういえば、名刺には「アーチスト」と書いてある。彼の世界は「ラテン」のムードを漂わせており、見ているものにパッションと元気を与えてくれる。色づかいが日本人らしくなく、濃くって陽気で一瞬にして彼の世界に引き込まれる独特のカラーなのである。スカイブルーはまさに美山ブルーといってもいいくらい。彼は今年、ラスベガスのミュージアムでの展覧会にも出展されており、世界のアートファンからも注目を集め、業界誌では「キースヘリング」に匹敵するぐらいの個性的な色を出すユニークな画家とも批評されていた。いつも、彼を凄いと思う点がいくつかある。まず、手が速いこと。依頼してから出来上がりまでが本当に速くて驚く。オーダーした人への感謝の気持ちが行動にあらわれるかのように。次にいつも営業していること。と書くと表現がおかしいかもしれないが、彼は絶えず、銀座や地元の大泉学園やその他のギャラリーへ作品を出展。そのたびに作品を描いている。そして、必ず電話かハガキでのご案内をくださる。「◯◯ギャラリーで何日まで出展しておりますので、お近くにお立ち寄りの際はどうぞ・・・」という留守電が入っていれば、お近くでの用事がなくともつい、出かけてしまうものだ。また、出かけたら必ず御礼状が届く。営業マインドもしっかりお持ちのアーチストである。あと、感心するのは、客のニーズを満たしながらも自分の世界を常に確立していることだ。そう、自分自身のスタイルが出来上がっている。「美山さんは何を描きたいのですか?」の質問に、「幸せですかね」とそんな言葉が出てくる。確かに彼の絵には、ワイン、料理、音楽、太陽、山、女、鳥・・などのモチーフがよく登場する。ちょっとしたお祝いごとなどに彼の作品を利用させていただいているが、世界中のくらしの中にいつしか美山ワールドが広がること、そして心疲れた人々を癒し、パワーを与える・・・1枚の絵がそんな存在になってくれたら本当に嬉しいと思い、つい、美山氏の応援団にいつの間にかなっている私である。
それから、同じくアーチストということで、上海にもいい味を出した作品を作り、販売している友人がいる。彼女もいい仕事人だ。彼女は中国の伝統工芸品や素材をモチーフにしながら、コンテンポラリーなアートを創出させている。わかりやすくいうとさまざまな工芸品を1枚のフレームの中にデザインしているわけであるが、素材の選び方、処理の仕方、フレームの美しさ。このデザイン力が個性的であり、スタイリッシュなのだ。
伝統的な中国を先進的な視点でアレンジしている。彼女のブランド名は「ドラゴンワールド」。台湾人でありながら上海で活躍する彼女には2000年はドラゴンワールドに向かう記念の年であり、21世紀はドラゴンパワーなのだそうだ。そう、21世紀のチャイナのパワーを予感させる素敵な作品を次々生み出している。彼女は今年、上海のホテルにSHOPを出した。その店も彼女の世界でまとまっている。伝統を自分の力で蘇らせているとは素晴らしい仕事である。このドラゴンワールドはぜひ、日本でも海外でも火がつくといいと思う。ちなみに日本の雑誌にも近々紹介されるらしい。

その3 亡き恩師のことを心を込めて書き上げた作家
マーケティングの勉強会でお世話になっている作家野村さん。彼はビジネス書のヒットメーカーとしても著名であるし、ミステリーもマーケティングもトレンドもOKというマルチ作家だ。(私の周りはよく考えるとマルチピープルが多い)野村さんは、サントリーに永年お勤めで5年前に作家として独立されたというユニークな経歴の持ち主であるが、最近、「佐治敬三の心に響く33の言葉」という本を出された。
昨年亡くなられたサントリーの会長の名経営者ぶり、文化人ぶり、人間ぶりが手をとるようによくわかる名著である。野村さんご自身がいかに佐治さんの下で会社員時代を過ごされ、またその結果として今日の作家野村正樹が存在するのかも理解できる1册であるし、それにしても、恩師のことをわかりやすく、心を込めて描かれたもんだと感心する。おそらく野村さんはこの1册の本の執筆を通じ、自身の人生をも振り返り、またサラリーマン時代の恩師のビジネスを、生きざまを今作家として1册の本として遺すということに筆舌に尽くせない想いをお持ちであったと想う。作家になっていたからこういう形で恩師への感謝の気持ちが形として残せる。すべて、勝手な推察であるが、いい仕事をされている。これまで何冊も野村さんのご本を拝読しているが、これまた毎日を精一杯生きているビジネスマン、経営者にはぜひおすすめしたい珠玉の1册だ。
まだまだ周りにいい仕事人はたくさんいる。皆、どの方も毎日を精一杯生きている。仕事を通じて自身を表現しようとされている。そして大変いい顔をされている。どうか、こういう人々を見習って、自分もせめて「いい顔」で毎日を生きられる人になりたいと想う次第だ。天職は神が与える?そうMy Godが与える。自分の選んだ道を信じて、ただひたすらに、ひたむきに生きていきたいものだ。いい仕事人たちに、感謝の意とエールを送ります。