2000年の幕開けである。世紀末は、人類が20世紀の埃や垢を落として、次の世紀を『清らかに』迎えられるようにといろんな大掃除が必要なようである。そんなことも関係あってかどうかは知らないが、今、巷では『断食』が人気をよんでいる。テレビや雑誌、インターネットでも・・・。何でも実感してみたくなる日頃の好奇心から、早速、わずか2泊3日の断食を体験してきたので、今回はその模様をお伝えします。(今回はボリュームが多いので、裏面にもわたってしまいました・・)
今回訪問したのは、伊豆高原にある『伊豆健康センター』という施設。最近、雑誌でよく取り上げられている施設で東京から電車で約2時間の静かなリゾート地にある。

Mahsaの断食レポート
<1日目>

13時すぎ、センターへ到着。この時点で、朝ごはんと移動中に軽くクッキーをレモンカルピスを胃の中に入れていたので、腹五分目という感じでのスタート。今から2日後の午前10時までの2日間の断食と、そのあとに捕食があるということを告げられる。
断食中は、水・お茶・ビネガー酵母液しか飲んではいけない。1週間の正式な断食コースをこなす方にはビネガー酵母液を毎日1リットルぐらい支給されるが、2日の断食では1日コップ1杯程度とのこと。ここで与えられるお茶はハブ茶と番茶。毎日交代で中味が変わる。
何でも断食の効用とは、センターの資料によると以下のようなことらしい。

  1. 内蔵の休養
  2. 老廃物の対外排除(血液浄化)
  3. 精神力の錬磨
  4. 自然治癒力を高める

なるほど。であるからして、断食中は以下の心得を守らねばならない。

〜断食中の心得〜

  1. 便を全部出す
  2. 1日1、5リットル〜2リットルの水を少しずつ飲む尿により老廃物を排出するそうだ。
  3. 支給のビネガー酵母液を1日数回に分けて飲むと新陳代謝がよくなる。
    ※ビネガー酵母液とは、ライスビネガーと酵母をミックス、水で割った黄色い液体。
  4. 水・ビネガー酵母液・健康茶(番茶かハブ茶)以外の飲食は厳禁。
  5. 体力に応じて、入浴・運動。
  6. 清潔に(肺や皮膚の呼吸で老廃物が排出されるので断食中は体臭が強まるそうだ)
  7. ゆったり気分で時間を過ごす

 実際、『夕食』のない夜の過ごし方は何だかもの寂しい感じがする。とはいえ、前日の睡眠不足もあり、入浴後21時には就寝。空腹感に悩む間もなく、ぐっすり朝まで眠る。ここで面白いのはその日見た夢。知りあいのレストランにいるのだが、『食べてはいけない、食べてはいけない』と自制しまくっている自分がいる。もしかしたら、食べてしまうのではないかという恐怖感から見た夢だとすると、無意識のうちに自分が断食にかなりコンシャスになっていることが伺える。

<2日目>
 朝6時半に目覚める。(いつもどおり)夕食を食べていないので、心持ちおなかがすっきりしている。利用者には、1日1本の健康茶が入ったポットが支給されるのだが、気が付くとそれを『ぐいッ』と飲んでばかりいる。きっと無意識にこのお茶で気を紛らしているのだ。
朝の体操。上海か大連で聞いたような音楽と中国語の号令の下、『練功16法』という体操が始まる。先生について身体を動かすが、ラジオ体操よりも動きは静かであるが、身体の筋が伸びたという感じがして、大変気持ちいい。もし、夕べ遅くまで何かを食したり、酒を飲んでいたら、この体操も苦痛で仕方ないだろう。さて、体操のあと、数々の治療。これだけの健康機器を揃えている施設は日本でも少ないとのこと。東京のマッサージ屋では味わえない感覚を朝から楽しみながら、すっかり空腹を忘れる。至福のひとときだ。
10時すぎ自由時間となったので、街へ(といっても、伊豆高原の駅周辺)出かけてみる。

約1日の断食を終えた今、どういうものに自分が反応するか?いろんな土産物屋や飲食店、スーパーの前を通ってみる。最初、困ったのはどの食べ物、飲み物を見ても『これは食べてはいけないのだ』と禁止命令が起こること。我慢せねばならない状態がつらい。普段欲しくないものでも、禁止されると『魅力的』に見えたりもしてくる。とはいえ、まだ『食べ物』を単なる物として観察することができるのだが、もうだめ〜、ああ食べたい〜と思ったのが、焼き立てケーキ屋から漏れてくるあの『甘い焼き立ての香り』と喫茶店から漏れる『コーヒー』の豆の香り。大変誘惑的であった。
次に、駅の売店で売っていた『伊豆のみかん』。これも手が出そうだった。それから、『ゼリー』『ババロア』はよく冷やして、この空腹で乾いた口に入れてみたいと思った。
スーパーを出て、『焼き立てパン屋』の前を通ると、焼けるパンの香りで、思わず中に店内に入ってしまう。(ちなみに断食中には、こういう食べ物を観察する行為は後々のリバウンドにつながるので、一般的にはよくないそうだ)お腹が空いたら、ミネラルウォーターを飲んで飢えを凌ぐ。
断食後24時間経過。気のせいか頭が少し痛い感じがする。余り歩きすぎるのも身体に悪いそうなので、センターへ戻る。手紙を書いたり、本を読んでいるうちに1時間ほど昼寝をしてしまった。断食中は、眠くなる人も多いそうだ。また体臭や口臭が気になるそうで少し当たっている。
16時から治療。断食中は、とにかく食を忘れて何か他のことに集中するといいので、こういう治療は身体にも大変いいし、気も紛れありがたい。生まれて初めての鍼と温灸の体験。この施設を訪れた日は、他に泊まり客がいなかったが、2日目午後から仲間が増えた。

60代と75歳のご婦人グループ。それから20代の女性グループ。この施設を訪れるのは7割が女性で、中でも30代の仕事をもつ女性が多いそうだ。そう、彼女たちは大変疲れているのだ(!)。
さて、私も断食を1日以上経過し、少し元気がなくなってきたので、ビネガー酵母液をコップ一杯いただく。みるみる元気に。それから夕方から夜にかけ、本を読んだりして普段どおり過ごした。
21時前、入浴。お腹はすかないが、夜が長い。そこでみつけたのが、体験者の記録ノートである。この施設へ来て、断食をしていった人々のさまざまな声が書いてあり、思わず、笑ってしまった。定年前の男性、10代学生、20代OL、50代夫婦・・・・この部屋に泊まった人々の生の声である。
そこで、興味深い点を挙げると、

  1. 断食中はやたら『テレビを見ていても食べ物のコマーシャルが多いことに気づく』意識がそこに集中しているからか?
  2. 今、食べたいものを列記しているのは若い女性(男性にはない)食べたいもの・・(書かれたいた日記より)一人の女性)チョコ、焼き肉(ハラミ、タン、ミノ)、アイス、パン、もう一人の女性)あんきも、カレー、寿司、ミルクレープ、食パン、いかめし、にこみうどん、おはぎ、お好み焼き、中華料理、豚足、とうもろこし、ミニストップの中華まん

日記を見ていると、断食中は自分と葛藤をしている様子が伺えるが、最終日には満足して帰っているようだ。この施設では、自由時間もあるので、自分自身の意志が大切である。外出してつい買い食いしてしまう人もいるそうで、時々チェックも入るそうだ。施設内のトイレのドアなどには『間食・外食は厳禁。他の人も我慢しています』というビラが貼ってある。さすがである。
・・・・ノートを読んで、本を読むのにも飽き、ポットのお茶を時々飲みながら、23時すぎ就寝。

<3日目>
 朝3時半と5時半に目が覚める。いつもより早く眠ったので、起きてしまったようだ。テレビを見ながら、何とか朝まで眠ろうと努力。7時頃、ベッドから起き出す。少し、ふらつく感じがするが、別に大したことはない。8時から例の体操。こんなに太極拳らしきものが、身体にいいとは思わなかった。この体操で、体内から元気がみなぎってくる感じがする。
そのあと、治療に入る。身体にアルファ波を送る器械に寝かされたり、手足を熱湯で温める治療。昨日も体験した西式健康器で左右運動など。治療を受けながら、そういえば断食してもう2日になるのか? 意外と平気なものだと思ったりした。

10時 断食後はじめての食事!メニューは玄米のおかゆ、ほうれんそうとあげのみそ汁(超薄味)、うめぼし2ケ、特製青汁。空腹感はあまり感じていなかったが、このお膳を目の前にした時、安心感を感じた。まず、みそしるを一口。本当に薄い味であるが、身体の中にピュ〜っと汁が入っていく感じ。次にはじめての玄米おかゆ。これはよくかまなければならない。これまでおかゆをおいしいとか玄米を美味しいとか思ったことは一度もなかったが、本当においしい。玄米が甘いと感じた。スプーンで少しずつ少しずつすくって口に運ぶ。時々、梅干しをかじりながら…。とにかく、少しづつ身体に入っていくことが実感できる。普段、そんな生活をしていただろうか。食事に45分ぐらいかけて、ゆっくり味わっている。早食ばかりしていた自分にとっては、こんな体験ははじめてである。当施設の青汁は『飲むジュースではなく、食べるジュース』である。一口ずつスプーンですくって食べる。一口ずつが程よいスッパさで、身体と頭がシャキッとする!これはイケル。ゆっくり食事をすることで、食べ物が身体中に染み渡る感じで、これをすべてたいらげるだけでもしんどい。満腹感があった。これで127Kcal。毎日こればかり食べていれば確実にダイエットできるなと思った…。

さて、食事の後、散歩に出かける。食事もとったし、元気いっぱいに…。1時間ほど歩いて、伊豆高原の観光地である美術館密集地に足を運ぶ。途中の喫茶店のケーキのメニューやアイスクリームの売店の前を通ると急に、甘いものを一口、口に入れたい心境である。1時間も歩くと、疲れが出てくる。普段より体力が落ちている。がんばって1時間半歩いて、ふらふら状態で施設に戻る。お腹が空いた。また断食の影響で便秘気味になり、おなかの具合が悪い。
施設に戻って、そろそろ帰り支度を始める。荷物をダンボールに詰め、2階の部屋から1階の事務所まで運ぶのもよろよろ…。支度が終わった頃、再度健康検査と院長のアドバイスを受ける。この断食療法と数々の治療、そしてこの東京とは違う時間を経て、初日やった良導路検査をもう一度行う。

初日高かった肝臓、腎臓、膀胱の数値も下がり、自律神経のバランスも良くなっているとのこと。但し、また東京に戻れば同じことになるということで、食事に関するアドバイスをいただく。人間の体力は41〜42歳から急激に衰えるので、それまでに養生することを覚えるようにと言われた。

そのあと、当センターの院長による健康教室が始まった。センターの創立者の馬淵医師の学説に基づき、健康的な食生活についてのアドバイスがなされた。
要点を挙げると、人間は気・血・動により生きている。気とは心であり、血は食事、動は運動である。その調和が大切であるとのこと。

健康的な食事の3原則

  1. できるだけ自然の物を食べる・・・・無農薬、無添加、季節のもの、土地のもの、新鮮なもの
  2. 腹八分目・・・・かすかな空腹感を残す
  3. バランス良く食べる・・・・ここが当健康教室の最大ポイント! 主食5対副食5の比率。さらに副食は1・1・3の割り合い
                  動物性タンパク質が1・・(魚介類)タマゴなど
                  植物性タンパク質が1・・豆、グルテンなど
                  野菜、海草類、芋類が3・・季節の野菜を中心に。

 健康教室を終え、17時から2回目の捕食。朝と同じく玄米粥、青汁。新たにじゃがいもの炊いたものと、豆腐と鮒の炊いたものが出された。
さきほどまで空腹感があったのに、一気には食べられない。今回もスプーンで1杯ずつお粥をすくい、2センチ各ぐらいのじゃがいもや豆腐も箸で小さく切ってからでないと入らない。いずれも薄味。断食をしていない人には、絶対薄すぎてまずいと思われる味であろう。しかし、今の自分にとってはすべての食材の味が噛むほどに理解でき、美味しいと思う。8割ほど食べたら、もう満腹感があったが、元気を付けなくてはとがんばって最後まで食べる。青汁はデザートとして、いただく。スプーンで少しずつ口に運ぶと、全身がひきしまって大変気分も良かった。

お腹も脹れたところで、荷物をもって出発である。伊豆高原の駅で、断食中にみつけた美味しい焼き立てケーキとクッキーを土産に買う。
帰りの電車の中で、何か間食するのでは?と思ったが、カフェオーレ(3日ぶりのコーヒー)をやっと1杯飲んだだけで他のものは一切欲しいと思わず、その日は深夜2時まで起きていたが、普段と違って何も口にしないで眠りにつくことができた。
と、今回大変貴重な体験をしたので、詳細を書いてみたが、今回の断食経験で学んだことは『いかに人間は1日に何度かの食事をとることを当たり前にしているか』ということである。朝、昼、夕の食事が逆に1日の生活のリズムに欠かせないものとなっている。断食をすることで、いかに食事が人間にとって大切であるかも理解できた。逆にたまには抜くことで身体も心もスッキリすることが実感できたのは、収穫である。疲労回復、健康づくりのために、わざわざ施設へ出かけなくても、たまにはミニ断食を行ってみたいと思う。心身ともに健康でありたい皆様にもぜひ、おすすめします。

 さあ、20世紀最後の1年、ますます元気に素敵な毎日を重ねたいものです。