「お父さん、一緒に来たよ!」

「ちょっと、また変なこと思いついたんやけど」
と、妹に言う。彼女は、時々私がそういうことを言うので、とくに驚かず
「何?」と聞いてくれ、
「いいねえ~」と合意を得て、実行することにする。

四十九日の法要後、お寺に預けてある父のお骨を、しばし外出させて
いただくことに。
「じゃ、まずは、あそこへ」
ということで、二年前、父が倒れる前日まで毎日通っていた、近所の喫茶店に
向かう。生前、なんとかもう一度、連れてきてあげたいと、介護タクシーの
予約まで考えていたが、実現せず。亡くなった夜、葬儀場へ向かう車にお願いをして、この店の前を通り、父の亡骸に「お父さん、ほら、来たよ」と声をかけ、その後、実家の前を通って・・会場へ向かったのが、昨日のよう。

そして、ふと、浮かんだのが、このお出かけだ。
お骨は世間様を驚かさないように、エコバッグに入れ、さりげなく移動。
「こんにちは~。ご無沙汰しています~」
妹と二人へ店内に。
コロナの影響が続いてか、その時間はちょうど、お客さんがいなかった。
「あのー、お父さん連れてきました~。一緒に来ました~。」
父のことを本当によくしてくださったマスター以下、お店の皆さんが
瞬間???となったが、
「ここに」
と言うと、皆さん、
「ああ、来てくれたんや~」
といって、エコバッグの中の父に、皆さん声をかけ、歓迎してくれた。
そして、以前と変わらず、コーヒーを飲みながら、しばしの時間をともに
した。
店の雰囲気もスタッフも変わらないが、変わったのは賑やかさと話題。
両親が生きていたころは、その話声で賑やかだった。その後、二人が
通えなくなり、代わりに時々私たちが訪ねるときの話題は、介護の大変さ・・・。
それが、今は、すべて思い出話になった。

そろそろ、次の目的地にということで、おいとますることに。
「納骨したら、またお墓にいますので、宜しくお願いします」
と言うと、みなさん、エコバッグの中の父を抱きしめたり、
「ヒロさん、小さくなってしまって~」と、別れを惜しんでくれた。

妹と、二人で、なんだかいいことをした気持ちになり、次はお墓へ。
母に父のお骨を見せながら、
「もうすぐ、そっちに入るので、もう少し待ってて~」
これもかなり変な会話であるが、妹と私はそういう感じで一緒に
親孝行もどき。

もっとこうしてあげたら良かったのでは・・と言い出したらキリがない。
今できることを。

「お父さんと一緒に・・」もう少し、このまま・・という気がしている。

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