「ボトルキープ」というギフト

最近、ボトルキープというのも、ちょっと懐かしく、また新鮮だ。
若いときに、新宿歌舞伎町のお店では、もしかしたらウィスキーか
焼酎の1本や2本キープしたことがあったのかもしれないが、
高級バーなどではなく、カラオケスナックの類。
ああ、今から思えば懐かしくてたまらない。
もし、その店が今も営業しているならば、必ず定期的に寄っているだろう。
そう、ボトルキープとは単に、好きなお酒を格安に飲む
システムではなく、
馴染みの店である。という顧客の刻印のようなものだと思う、
だからキープしてあるボトルがたくさんある店は、
リピーターが多い。だから繁盛店ともいえる。

さて、81歳になる父親。おそらく毎日の晩酌は、麦焼酎。
いろんな焼酎を試したようであるが、結局はもう何十年も飲み続けている
あのIではじまる銘柄がお好みのようだ。
久しぶりに、父の愛好する居酒屋に同行する。
本当にそこが好きで、彼にとってのサードプレイスではなく
セカンドプレイスかもしれない。
そこでもいつも、そのIの焼酎をオーダーする。
お湯割り、梅干し割。

「あ、ちょっと待って。今日は、キープしよ。
冬を元気に過ごしてくれたから、それとちょっと遅めのバレンタイン
ということで。」

お店の人が「いいんですかあ」といいながら、720ミリボトルを
奥からもってくる。
「はい、お好きなように召し上がれ」
お湯を先に入れるのか、焼酎を先に入れるのかでちょっと
口論になりかけながら、
父は嬉しそうにマイボトルとなった焼酎を開け。先に注いだ
お湯の上になみなみをその麦を注ぐ。

なんとなく、この光景を見たら、父が20歳ぐらい若返った気がした。
自分で好きなお酒を割って、飲めるなんて、
元気な証拠。

店の人に「ボトルに名前書いて」
と言われ、私が白いマーカーペンを受け取る。
「苗字でいいぞ」と父は恥ずかしそうに言い、
私はフルネームで書き、下の名前をひらがなで書く。
すると、店の人が
「ああ、こういう名前なんだ。おとうさんの名前漢字だとわからんし」
とそこからまたたわいもない会話が始まる。

たまには、ボトルキープ。

そう、1本の焼酎をプレゼントしたことは何度もあるが、
キープするというプレゼントは、父にはもっとうれしいかもしれない。

モノではなく、コトのプレゼント。
ボトルキープのプレゼント・・・。うん、なかなか良い感じ。
長寿の命水となれば・・幸い。

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