パリの誇りよ、永遠に。

パリの東駅でICEを降り、メトロに乗り換えようと切符売り場に並ぶとまたたくまに、物乞いの人に声をかけられた。
後ろから、「スリにご注意」というアナウンスが多国語で流れる。日本語も含まれている。あ、パリに来たんだ。とかなり緊張しながら、持っているリュックを
背負わず抱きかかえる。四半世紀前、パリの地下鉄の改札で、ひったくりにあったことを思い出し、余計に身構える。
混雑ぶりはもとより、NYよりも切羽つまった人種のるつぼという気さえする、パリの町。
もし、日本が島国でなければ、東京はパリのように混雑していたかもしれない。
とにかく、緊張して混雑した車内に乗り込む。
昔のパリのメトロは情緒があって、駅の通路でもアーチストたちがさまざまな演奏を行っていた。思わず立ち止まり、電車に乗るのを忘れるほどに、異国情緒にあふれる演奏が多いのがパリの思い出・・・。
そんなよき時代を思い出し、混雑した地下鉄車内。早く目的地に着かないかと思っていたら、写真の紳士が乗り込んできた。
アコーディオン弾きのおじさんだ。
車内演奏は今も健在なんだ。ふと、大好きだったパリを思い出し、心がほころんだ。混んでいるので真ん前にどアップで見える。彼のアコーディオンはかなり小さい。これなら私でも持ち運びできる。でも、鍵盤が少ないな・・。など混んでいるためよく見える。すると演奏がはじまった。
電車が混んでいようが、どうであろうが、演奏は高らかに始まる。
シャンソンのような曲に続き、アルゼンチンタンゴのような・・・・。
この混雑している車内で生演奏か・・・。これがパリ。思わず混んでいる車内でこっそり財布を開き、青いケースにコインを入れたら、演奏しながらにこっと笑ってくれた。
そう人に癒しを与える演奏家には、敬意を表して、必ずチップを払うことにする。同じ音楽をするものとしての、協力であり、共感だ。
ふと、そのなんともいえない紳士の風貌から、彼が家を出るところを想像した。
「行ってくるよ」寒い木枯らしがふく午後に家を出て、パリ市内のメトロを乗り継ぎ演奏をする。そして・・・。
パリでは物語がおのずと生まれる。
持ち運べないアコーディオンに手こずっていた私。持ち運びなら、これもいいな。
危険だけれど、甘美な一面もあるパリ・・。
今回も健在であった。

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