クレームは優しさでもあり。

ある駅前のホテルで、お客様と軽食をいただきながらのミーティングとなった。
レストランというよりは、カフェラウンジ。仰々しくなくカジュアル、でもホテルのお店なので落ち着きもあり、程よい品もある。
オーダーしたチーズに、一緒に盛り付けられたパン。一見、おいしそうなバケットのスライスだ。でも切れていない。10センチぐらいの長さのまま。これ、手で切れるかな?パンをかじって、チーズを食べてということか?ま、いいか。ないよりはいい。
「チーズは、パンと一緒に食べたらおいしいですよね」
とお客様におすすめしながら、試しに自分が先にパンを手にとる。あれ?
硬い。硬すぎる。カチカチやん。なに、これ?
「あ、これ食べたら歯が折れますわ。ちょっと待ってくださいね」
といって、お店のスタッフに合図して、席にきてもらう。
「あの、申し訳ないけど、このパン、かちかち。これ食べたら歯折れると
思うので、変えてくれませんか?」
若いスタッフは私の言葉にびっくり。そりゃそうだ。歯が折れるパンとは?
彼女にはわからない。お皿ごと運んできただけだ。パンには触れていない。
「あの、これはトーストしてありますので」
「いや、でも、カチカチで食べられない。あたためると硬くなるパンもあるよね」
「少々お待ちください。」
スタッフは、パンをもって厨房に行った。そしてトーストしていないバケットをうすくスライスしてもってきた。
最初からそうしてくれたらいいのに。
「無理言いました。ありがとう」
お礼をいって、ふたたびお客様にすすめた。
私がクレームを言うので、お客さんもきっとびっくりされていたことだろう

でも、お客様と一緒に
「まずいですよね。食べづらいですよね」
と言いながら、不満な時間を過ごすのは嫌だ。せっかくの時間、せっかくの食事なら、より良い共有にしたい。
「やっぱ、こっちの方が美味しいですよね。どうぞ。お騒がせしまして
すみません。お店の人にも言ってあげた方がいいと思っていますので、うるさくてごめんなさい」

お客様はにこにこして、ビールを飲みながら、チーズをつまみはじめた。

気が付いたら目の前で言う。直してくれたら、よりよくなったらそれでいい。
それがいいコミュニケーションになることもある。
言わないで、こそこそならまだしも、ネットで店の評価を下げたり、負の拡散をするのはしてはいけないと思っている。
口に出してくれる、声に出してくれるお客様は本当にありがたいと思う。と、
職業柄沁みついているせいか、どこへいっても、ついうるさいおばさんになって
いる。

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