風薫るふるさとの町で、うちわ職人に出会う

わがふるさと岐阜市のもっとも美しい場所は、岐阜城がそびえる金華山のふもと、長良川の風物詩鵜飼いの船着き場と眼前の旅館街。最近はきれいな観光地として整備され、内外からの来客も増えている、「河原町」というエリア。
岐阜城の真下にあるので、空襲の影響もほとんど受けなかった場所で、昔ながらの面影が程よい感じに残されている。
岐阜に住んでいるときには、この町のことは知らなかった。一度、離れてこんな素晴らしいところが・・と発見し、知らなかった自分に驚いたほど。

久しぶりにその河原町を歩き、以前立ち寄ったことのある、うちわ屋の前を通り、懐かしくなり再び、店の前のうちわに目をやる。色とりどり、透かしも岐阜らしい水うちわも、種類大きさともに豊富であるが、ひとつひとつのうちわにこもった人肌も感じ、店先から離れられない。

鵜飼いも今月から始まり、また暑くなるので、うちわは季節商品として、またお土産としても喜ばれるため需要が高まる。鵜飼い船の船着き場からほど近い場所、旅館の前にあり、鵜飼い見学客は必ずこの店の前を通ることだろう。

そんな好立地のお店。風も強く、平日の午後でもあり、店先で団扇づくりをする職人さんが目に入った。仕事されているので、話しかけたらいけないなと思いつつ、つい、店頭のうちわについてあれこれ、聞いてしまう。

その職人さんは店主だ。そして、なんとこの団扇づくりをただ一人でされている。30年以上やっておられるとのこと。以前はお母さまも一緒に作業されていたが、高齢のため、今は店主おひとりががんばって、うちわを毎日作っておられる。

今は四代目。明治後半に、京都の団扇屋さんから、この地に出てこられての創業だそうだ。鵜飼いはその当時もあったはずであるが、鵜飼いの歴史とともに100年商いを続けておられるようだ。

その店主は、なんと私と同世代で、いろいろ共通点もあり、話が弾んだ。
話を聞きながら、この仕事をお父様亡きあと、受け継いで守っておられることに頭が下がり、胸がいっぱいになってきた。店主は話しながら、団扇づくりの手を止めない。ちょうど、話をしていてもできる工程のときにお邪魔したというラッキーなタイミングであったのだ。

ひとりでやる仕事。誰も助けてくれない。
10連休なんかあっても、休んでもその分かえってくるのは自分。

なかなか次の世代に残すことが難しいお仕事のようだ。工業製品が増えている今日、昔ながらの天然素材を提供する仲間の存続も厳しくなっているなかでの
モノづくりとのこと・・。

気づけば20分以上もお話しをお聞きしてしまい、貴重な時間を申し訳なかったと思いつつも、こうして大切に手作りの仕事を、静かにされている姿を見て、
心から尊敬の念が湧いてきた。
この人が作ったうちわで、風を仰ぎたいとも思った。

以前にも買っていたのだが、お話しをきいて、改めて岐阜には素晴らしい工芸品が存在していることを学び、応援しなくてはと心から思った。
あと何十年されるのか、わからないが、ずっとずっと応援したいと。

ひとりで仕事をする人だから、余計に共感したのだ・・。

メディアに取り上げられたことも数多いが、その影響も経験されており、
今は静かにペースを崩さずに・・・ということが大切なようだ。

どうぞ、お元気に鵜飼いシーズンを乗り切っていただきたい。

思い出すだけで、うちわを仰ぐだけで、長良川のいい風が吹いてくる。

ふるさとには、今だからうれしい出会いがある。


平日の静かな河原町
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