ハンバーガー、サンドイッチ、カレーライス、牛丼……日本では世界でも他に類をみないほど、豊富な種類のファーストフード群が一大市場を形成しているが、なかでも日本的ファーストフードはなんといっても「ラーメン」であろう。
無口で愛想なしのおっちゃん経営の個人店から、全国に広がるチェーン店まで……と経営形態もさまざま。最近では、国内にとどまらず台湾・上海・北京でも日式ラーメンは大人気。醤油に味噌・塩・とんこつ……最近では豆乳もあり、博多、札幌をはじめとするご当地ものまで、味も種類も豊富……。と実に奥の深い業界である。
とても好きなんだけれど、ひとりで店のドアを開くのはどうも気が引ける……というのが従来のラーメン屋のイメージ。なんとなく、ひとりで店に入り、カウンターの高めの丸椅子によじ登ってギョーザや「にんにく」をオーダーする、ときにはトッピングを2種類お願いしてみたいが、そんなことはどうも気恥ずかしい。それはラーメン屋という業態が、男性客中心のイメージがあり、またとくにカウンター中心の店では、すべてが見られている、聞かれているというイメージがあり、恥ずかしいという面があるせいだろう。(自意識過剰か?)
「へえ、あんなにたくさん注文して、よく食う女だな〜」と思われやしないかとの思いで、つい店の前を素通りしてしまう。また勇気を振り絞って中に入っても、汚くて狭くて荷物やコートも置けずに居心地悪い……という印象もあり、5回入りたいと思ったら4回我慢するというのが、これまでの私にとっての「らーめん屋」像であった。
さすがに最近ではファミリーレストラン風のボックス席中心の店が増え、前よりは入りやすくなったが、それでもメニューを見るたびに「太りそうだな」という恐怖感がつきまとうので、自分にとって、ラーメン業界は私的には遠ざけておきたい業界であったのであるが……。

これまでにない新感覚のラーメン屋の新業態を作ろう! ということで、プロジェクトメンバーとしてお声をかけていただいた。
半年かけて、ターゲット選定、コンセプトメイキング、メニュー開発、ショップイメージの構築、コミュニケーション表現、手法の開発……などに一緒に関わらせていただいた。
女性視点でずっと提案させていただいたのが、「女性ひとりでも安心して入ることのできるお店」「健康でおいしいメニュー」「太ることを気にしないで食べられるメニュー」「ミニサイズ・組み合わせ提案」「きれいでおしゃれなお店」などなど……。
経営的に見れば、ラーメン屋の午後のアイドルタイムは厳しいものがある。立地によるといっても、やはり主食として食べるフードであり、小腹が空いたから、はいラーメンというわけにはいかないのである。だからこそ、小腹の空く時間をどう対応できるか、ラーメン一杯目的ではないお客様でいかに売りを稼げるか……。そしていかに単価を引き上げるか……。つまり価値ある商品を適正価格で提供できる努力。今どき流行りの「安さ」を売りにしないで、美味しさを武器にするということ、さらに、お客様の気をそそるセット商品の開発……あるいは、これまでのラーメン屋になかった「新しい食のシーン」の提案なども考えてみた。
市場調査は国内のラーメン屋にとどまらず、上海まで視察ツアーを組み、商品開発のネタや、空間づくりのヒントを多数ゲットすることも……。
紆余曲折・試行錯誤を繰り返しながら、この秋その新業態1号店が春日部にオープンした。(それまでに、ラーメンの試食をしずぎて体調・体質・体型に影響が出たことも……とくに3つ目が恐ろしい……)

店名は「チャイナちりめん」。コンセプトは「美味しいカジュアル」。これまでにない、おしゃれで快適な空間で、「野菜」を中心とした麺類を核に、ヘルシーな中華料理を提供するファストカジュアルなお店。
とくに最高のおすすめメニューは酢と梅干の酸味が効いた「ちゃいな元気麺」。すっぱいラーメンというのは、台湾や中国で食する酸辛麺は馴染みがあるが、和風のすっぱいラーメンは本邦初であろう。不思議なことに食するごとに、元気が中から沸いてくる、そしてあたたまる。ついでに細胞からきれいになれそうな……そんな幻想さえ沸いてくる、女性向けのヘルシー麺である。そのほかにも、季節の野菜をふんだんに使った商品が多数あり、それぞれおすすめである。
カフェ感覚でおいしくチャイナを楽しんでいただきたい……と、店内のディスプレイも「ちょっぴりおしゃれなチャイナワールド」を表現した。
とはいえ、国道沿いの住宅街での出店。駅前やオフィス街なら通行人へのアピール度も高いが、なんせ表はトラック含めて車がびゅんびゅん、裏は静かな住宅街ということでど派手感のない当店にとっては、簡単な立地とはいえない。テスト店ゆえのマイナーさもあり、とにかく最初は地域住民への告知がポイントと、折込チラシをせっせとまいて、地域の女性を核としたグループ客との接点づくりを開始したところである。
時間は少々かかるが、地道にリピーターを作っていく……店を育てていくのに我慢も必要な立地ではあるが、育てる楽しみもこれからだ!
半年かけて、新業態のカタチができた。しかし、スタートするところまでは実は第一ステップ。この立ち上げた店をいかに緊張感なくすことなく、常に新鮮で、好意に満ちた素敵な店であり続けることができるか?
あくなき商品開発の連発。心憎いサービス。心からのおもてなし精神……。これからが勝負である。
今回のプロジェクトを通じて、ひしと感じたのは、会社の号令だけではモノは動かず、ひとりひとりのがんばりや熱情こそが、周囲を動かしていくのだということ……。
新しいことへの挑戦はそれなりのリスクもある。しかし、きっとこの新しいスタイルが日本中の女性のお客様に、浸透していく日を信じて、ずっと後ろから現場を応援し続けたいと思っている。
やっぱり人は永遠に「美味しいもの、楽しいこと」を求め続けているようで……。
フードサービスは実に奥深いと改めて思っている今日この頃である。