昨年末、ある青年からメールが届いた。それは新潟の農業青年から。それを読むと、そのメールを送るまでに4年の月日を要したとある。ある冊子の記事で私の講座のことを読み、「農業をやるこれからの人にはコミュニケーション力が必要なので、勉強会をやってほしい」との内容。いろんな企業から団体からのご相談・ご依頼をいただいてきたが、農業青年からは初めて、この青年の熱い思いのこもったメールに感激、できることは何でもお手伝いしよう!とふたつ返事で受ける。1月に新潟県農業青年の幹部が集うイベントに出向き、そこで「コミュニケーション力強化」のレクチャーとワークショップ。会場にはこれまで久しくまとまって見たことのない青年たちが70名ほど。
彼らの素朴さと真面目さにこちらも引き込まれ、お互い熱の入った研修会となった。その後、そこに参加した青年たちとは、交流が絶えず、私主催のライブに野菜持参で登場したり、出張で各地を訪ねればその土地の青年たちと会い、すると彼らは必ずお土産といって「うちで作った野菜・米」をもってきてくれる。「これ、おれが作ったほうれん草でっす」「甘いっすよ」とレゲエのミュージシャンルックスの青年、新婚旅行に東京に来たから会いたいと夫婦で米をもって登場する青年、待ち合わせした居酒屋に自分たちが作った野菜を持ち込んで最高の状態で食べさせてくれて、熱い思いもたっぷり聞かせてくれた青年たち・・・。「アスパラは茹でてから冷やして食べたほうがうまいっすよ。ほら、枝豆と同じですって」「今尾さん、この青梗菜、生でかじってくださいよ。最初は何もつけずに。ね、うまいでしょ」などなど。講演を依頼してくれた幹事からは「今尾さんのおかげで、講演後、皆が変わったんですよ。自分から語るようになったんですよ」といわれて、本当に胸の奥底が熱くなる思いをさせてもらった。
そしてしばらくすると、その幹事から連絡が入り、「今尾さん、僕、今度全国の会の役員になったんですよ。それで全国の集まりで、またやってくださいよ」
ええっ!新潟県の農業青年の話が全国区へ?!これまたふたつ返事でもちろん受ける。彼らは7月16日(書いているまさに今日です)農業青年発のコミュニケーション雑誌を発売するという。これから青年たちで農業を、日本を変えるという熱い意気込みだ。その思いを一部の幹部だけでなく、全国の農業青年と思いを行動を共有したいという意図であった。今回のこのイベントのテーマは「農カツ!」だという。ちょっとプレッシャーを感じながらどうせやるなら、その会は絶対に成功させなければ!そこで依頼された研修だけでなく、学んだコミュニケーションを即実践できる企業や生活者との交流会にも企画を出す〜どうせやるなら、おしゃれにかっこよく。自分たちが持ち込んだ野菜を使い、オリジナルの料理を提供してもらう・・・レストランの紹介からパーティーの中身、タイムテーブル、PRにいたるまでお節介おばさんは農業青年は何も知らんかもしれないからと、いろいろ口を出し、ときには真剣に意見をぶつけあうこともあった。(メールで熱く、電話でフォロー?ということも?)
ある幹部から「なんで、今尾さんそこまで私たちのためにしてくれるんですか。そんな本気な人、初めてです」と言われ、「うーん、なんていうか、要するに皆のことが放っておけないという気持ちかな・・」。といいながら、私は本当に彼らの取り組みに心から敬服していた。朝から昼間・夕方まで農作業に出て、その合間にこの大イベントの準備を自分たちですべてしている。今の大人たちはこんなに一生懸命やっているか?と思うぐらいに。そのガンバリに共鳴したのだ。
7月14日代々木オリンピックセンターでその会議が開催された。2時間半の与えられたセミナーで全国から集まった農業青年幹部たちに「農カツは活コミから始めよう」というタイトルで研修を行った。レクチャーからグループディスカッション、プレゼンテーションから総括まで。汗をかいて、参加者全員がどきどきはらはら、終わってみたら「あっという間」の時間であった。その後、農業を取り巻く各業界の企業より、農業青年への期待についてのプレゼンもあり、彼らの意識と使命感はさらに高まったはず。
そして、待望の夜の部。「ファーマーズ パーティー IN SHIBUYA」をベジタブルレストラン シェフズVにて開催。最初の打ち合わせ時には農業青年以外に何人集まる?という不安な意見もあったにも関わらず、農業青年の交流会ですよといえば興味を持つ方が多く参加希望者多数。受付制限をしながら当日は130名を越える会場満員御礼の大交流会となった。またその日は店側も他の店舗からもシェフ・店長たちが出向き、全員で料理をふるまい、もてなしてくれた。農業青年が創った野菜を青年シェフたちが料理をする。これはなんとも感動!「枝豆って、茹でて食べるのが一番うまいと思っていたけど、このムースうまいっすよね。こんな風になるんだと感激しました」という素直な声もあるかと思えば、ある農家の青年は「この米は、何も料理せんでそのまま食べるほうが味がわかる」と言ったが、おそらくそのまま食べること以外の食べ方、楽しみ方を今後どんどん体験し、知るようになれば彼の認識は変わるだろう。ビジネス感覚も変わるだろう。今回はそれも含めての「農カツ」である。昼間の研修の効果があったかどうかはともかくとして、とにかく農業青年は活発に会場で企業やお客様と交流し、自分たちの思いを笑顔いっぱいで語っていた風景は今も脳裏に焼きついている。無事に1日が終了した。
翌朝携帯からメールが入る。「昨日はありがとうございました。いただいたコミュニケーション31か条はすぐに実践します。絶対に島根へ来てくださいね」。彼は朝起きて、すぐメールしようと思ってくれたのか。午後に携帯からメールが入る「今、会議終わり、新幹線の中です。刺激受けました。パーティー最高でした。ありがとうございました。自分もがんばります。またお会いできる日を楽しみにしています」・・。夜の部を受け持っていただいたお店の方からは「会社始まって以来、店長やシェフ同士が一緒になってひとつの仕事をでき、楽しかったです。いい経験ができました。またやりたいです」「農業青年たちとはこれをきっかけにまた何かしたいと思っています」「農家の人が野菜を送ってくるとき手紙を添えてくれて、彼らの思いがひしひしと伝わってきました」・・・感激のメッセージが届き、日が変わっても胸はいっぱいのまま・・。

仕事とは出会うためにするものか。結果としてそう思う。 新潟での仕事を通じ、日本の農業青年たちとの大切なご縁をいただいた。 彼らは日本を担う大きなかけがえのないパワーである。その彼らに自分は何ができるだろう。 「今尾さんにできなくて俺らにできること。それは野菜作ったり、米作ることですわ」茶目っ気たっぷりに切り返してくる彼らを一生応援し続けたい。 すべての関係者に心から感謝を込めて・・・。